【貴族探偵】 麻耶雄嵩

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By翠香

◆◇◆推理などという雑事は使用人に任せておけばいいのです◆◇◆

貴族探偵シリーズ1
短編集
集英社 2010.5
  集英社文庫 2013.10


■あらすじ

信州の山荘で、鍵の掛かった密室状態の部屋から会社社長の遺体が発見された。自殺か、他殺か? 捜査に乗り出した警察の前に、突如あらわれた男がいた。その名も「貴族探偵」。警察上部への強力なコネと、執事やメイドら使用人を駆使して、数々の難事件を解決してゆく。斬新かつ精緻なトリックと強烈なキャラクターが融合した、かつてないディテクティブ・ミステリ、ここに誕生! 傑作5編を収録。
(集英社文庫より)

■感想
テーマ読み「探偵」5番手は、貴族探偵です。
「諸君、この私が来たからには大船に乗ったつもりでいてくれたまえ。わっはっは」
このセレブな御仁は誰?貴族探偵だって?推理は使用人に任せているって・・・オイオイ!

今回のテーマ読みは積読本消化の意味もあったのですが、
本作のタイトルと表紙のインパクトには抗えず、新刊ではありますが急遽ラインナップに加えました(笑)

そもそも貴族探偵って何?って思いますよね。今の時代に貴族って・・・。
読む前は大富豪が暇に飽かせて探偵をしているのかなと思っていました。
何せ大企業の御曹司やご令嬢が刑事になる時代ですから(^^;)
しかしただ富裕層というだけでなく、警察幹部に顔が効くらしい。
下っ端の刑事が楯つこうものなら簡単に首が飛ぶぐらいの影響力を持っています。
皇族の方?大物政治家のご子息?彼の正体は謎に包まれています。

さらに「探偵」と名乗ってはいるものの、捜査は一切しません。
彼の手足となって働くのは、執事やメイドたち。
ちなみに執事が主に対し暴言を吐くという身分をわきまえないことは一切しません(笑)
では安楽椅子探偵なのか?使用人が集めてきたデータを元に推理をして真相を導き出すという・・・
ところがこの貴族探偵、推理もしません。
「推理などという面倒なことは使用人に任せておけばいい」と言い放ち、
自分は優雅に紅茶を飲んでいるか、女性を口説くのに忙しい(^^;)
手足のみならず、頭脳までも使用人まかせ。全く前代未聞の探偵です。

本作は5編からなる短編集です。
それぞれ貴族探偵の登場の仕方は異なるものの、基本パターンが同じなのであまり長く続くと飽きてしまいそう。
続編では女探偵との対決になるようですが、マンネリ化を防ぐための変化が必要なのでしょうね。


【1.ウィーンの森の物語】
山荘で会社社長が変死。現場は密室だったが、明らかに何者かが細工した痕跡が残っていた。
さらに山荘から帰宅した秘書が自宅で殺されていた。

冒頭は倒叙形式で、いかにも古典的なトリックを使うも犯人痛恨のミス!
犯人ダサっ!と思いましたが、ミスを逆手に取ったトリックが見事でした。


【2.トリッチ・トラッチ・ポルカ】
首と腕を切断された女の死体が発見された。
この女に強請られていた高校教諭が犯人と目されたが、アリバイがあった。
事件当時は激しい雨が降っていたが、被害者の遺留品の中に傘はなかった。

死体を切断した目的がポイント。
今回は可愛らしいメイドが推理するのですが、トリックはかなりおぞましいです
貴族探偵が警察官の不正を窘めたのも痛快でした。


【3.こうもり】
北陸の老舗旅館に卒業旅行で訪れた二人の女子大生は、作家の大杉道雄と出会い意気投合する。
この地域で行われた蝶陣祭のさ中、大杉の義妹・佐和子が殺された。
佐和子は近く夫と離婚するつもりだったらしい。

ここで使われるアリバイトリック自体は凡庸だけど、
もう一つのトリックと複雑に絡み合っている為、真相に気付きにくいです。
少々アンフェア気味ではありますが、手の内をバラしつつ、それをミスリードに利用するとは味なことをしますね。
最後にも驚きの事実が待っています。


【4.加速度円舞曲(ワルツ)】
山道で落石事故に遭遇した美咲は、貴族探偵の車が通りかかり助けられる。
石があった場所はとあるミステリ作家が執筆の為に利用している別荘だが、その作家は書斎で殺されていた。

この短編のみ見取り図が挿入されています。この図はよく見た方がいいです。
犯人と動機は予想通りでしたが、石は・・・そういうことね。


【5.春の声】
桜川家では令嬢・弥生の婿候補3人が集められたが、弥生は誰も選べずにいた。
祖父の鷹亮は3日の期限で選ばせようとするが、3人とも殺されてしまう。
それは三つ巴で殺し合うという不可解な状況で・・・。

AをBが殺し、BをCが殺し、CをAが殺す・・・卵が先か鶏が先か、頭がぐるぐるしてきます(^^;)
ちょっとそれずるくない?と思わないでもないですが。
究極の選択を迫られた桜川家だけど、これで一挙に解決。これが仕組まれたものだとしたら恐ろしい

■評価(5個が最高:★は1点、☆は0.5点)

 ◆トリック度267267267267267
◆冷や汗度404404
◆満足度★★★★

■特におすすめ!

  • トリッキーなミステリが好きな方
  • 奇抜なキャラクターが好きな方

◆テーマ読み「探偵」◆
テーマ読み「探偵」

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Comments 6

miroku  

探偵なのか?
という疑問もありますが、こういうだいそれた事をやるのが麻耶さん・・・ですからね。
本当に人を食った作家だと思います。

2013/12/03 (Tue) 22:00 | EDIT | REPLY |   

翠香  

mirokuさんへ

麻耶さんって大それた事をやる作家さんなのですか?
私は今回、麻耶作品初読みだったので・・・アンソロジーでは1度読んでますけど。
結構小難しいことを考える人だな~とは思いました。
やっぱり京大卒は頭の構造が違うのかしらん?(^^;)

2013/12/03 (Tue) 23:20 | EDIT | REPLY |   

mokko  

miroku さんと被った作品ですね

レビューを期待してました(o^o^o)
そうかぁ~高評価だったのですねぇ~
推理をしない探偵って??って思ってましたが
未読の作家さんかと思ったら、読んでました。
長編が不評で、短編は面白かったらしい。
これも短編集ですよね
期待度大ですо(ж>▽<)y ☆

2013/12/07 (Sat) 21:17 | EDIT | REPLY |   

翠香  

mokkoさんへ

雰囲気的には「謎ディナ」に近いかもしれない。
ストーリーよりもキャラ勝負という感じですね。
なのであまり長く続くとマンネリ化して飽きてしまいそう。
まあ謎ディナよりはトリックは凝っていますけど。

麻耶作品はメルカトル鮎シリーズが気になっているのですけど、どうなのかな?
mokkoさんは「夏と冬の奏鳴曲」を読んでますよね。
アンソロジーで読んだときは読みにくかったのですよね・・・。
本作は割と読みやすいですよ。

2013/12/08 (Sun) 17:22 | EDIT | REPLY |   

akane  

探偵???

私も読みました~i-175
麻耶作品はほとんど読んだことがないのですが、探偵と名乗る人物が探偵しない!!!という驚きの設定~i-239私は気に入ってしまいましたi-178
続編もチェックしたいですi-260

でも、ぜんぜん麻耶作品読んでないのでずい分前に読んだ「翼ある闇」をもう1度読んでみようかと思いますーi-230

2013/12/13 (Fri) 22:46 | EDIT | REPLY |   

翠香  

akaneさんへ

もはや探偵ではないですね(^^;)
人を喰った探偵という所が謎ディナと近いものがありますよね。
なので謎ディナにハマった人は本作でもハマるのだろうな~
う~ん、私は設定そのものはあんまり・・・この貴族探偵にもそれほど魅力を感じないし・・・。
でも使われているトリックはなかなか良かった。

私もメルカトル鮎シリーズは前から気になっていました。
来年から追いかけようかな。

2013/12/13 (Fri) 23:34 | EDIT | REPLY |   

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