【イーハトーブの幽霊】 内田康夫

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By翠香

◆◇◆酷評ニモマケズ◆◇◆

浅見光彦シリーズ68
長編
中央公論新社 1995.7
C★NOVELS 1997.6
  中公文庫 1999.11
  光文社文庫 2004.7
55TVドラマ化作品!(2000.10.27放送 主演:榎木孝明)

イーハトーブの幽霊 (光文社文庫)
イーハトーブの幽霊 (光文社文庫)内田 康夫

おすすめ平均
stars宮沢賢治は素晴らしいです・・・。
stars再文庫化が早すぎるのでは?
stars浅見光彦と宮沢賢治

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■あらすじ

 宮沢賢治が「イギリス海岸」と名付けた北上川の川岸に、男の他殺体が流れ着いた。花巻市が花巻祭りの準備で賑わうころだった。被害者は「幽霊を見た」と話していたという。取材で訪れていた浅見光彦は事件の渦中へ。祭りの初日、今度は「さいかち淵」で毒殺死体が見つかり・・・・・・。
 賢治の理想郷「イーハトーブ」を震撼させる連続殺人! 浅見光彦は「幽霊」の正体を追う!

(光文社文庫より)

■テーマ
 宮沢賢治
 いじめ問題

■舞台
 岩手県花巻市
      一関市
      北上市

■ヒロイン
 郡池愛(中学三年生)

■感想
 浅見は『旅と歴史』の藤田編集長の命により、花巻祭りの取材で宮沢賢治のふるさと、岩手県花巻市を訪れます。その直後、通称『イギリス海岸』にて、他殺体が漂着するという事件が・・・。被害者が双葉町の山車の製作に携わっていた人物で、たまたま(?)浅見が山車の製作を取材に来ていたことから、「怪しい人物」と思われてしまいます。浅見の居場所が分からない警察は自宅へ電話、電話口に出た須美子が不用意にも

 「またですか」403

 と呟いたのを聞いた刑事は、「常習犯か?」とさらに疑いを強くします。まあ、ある意味「常習犯」ですけどね(笑)

 今回のテーマの一つが『宮沢賢治』。賢治のふるさとを舞台に、賢治の作品にちなんだ見立て殺人が次々と起こります。なんとなく【「萩原朔太郎」の亡霊】(これは浅見光彦シリーズではなく、岡部警部シリーズです)と似た雰囲気の作品ですね。偏執狂的な犯人が、作品をモチーフにして見立て殺人を行う(【「萩原朔太郎」の亡霊】の方がかなりグロテスクではありますが・・・。)という点、30年来の恨みが引き金になっているという点、共通点が多いと感じました。タイトルの「幽霊」と「亡霊」も似ていますね。

 今回の浅見の捜査は、現場に落ちていた万年筆から、ペン先の修理工場を探し、持ち主を突き止めるという地道な作業をしています。こういう誰も気にも留めないような小さなことからコツコツと(ギャグのせりふみたいですがw)捜査を続けて、解決の糸口を見つけ出すのが、内田作品の醍醐味です。大仕掛けのトリックなどなくてもちゃんとミステリーは成り立つのです。──と、こんな論調になったのは、この作品が発売されてまもなく、朝日新聞に載った書評のせいなんです。あるミステリー評論家が書いたものだそうですが、これがひどい。詳しくは浅見光彦のミステリー紀行〈第7集〉作家と読者の不思議な関係 (光文社文庫) で内田先生が書いていらっしゃるので、そちらを読んでいただきたいのですが、一部を引用しますと、

 浅見も推理らしきことはするが、大半は直感とまぐれで正解に達する

 内田氏の読者は別に推理の妙味を期待しているのではない

 ・・・どうですか?「直感」は名探偵にとって大事な要素だと思います。また、先にも書きましたが、浅見は地道な作業を続けており、決してまぐれではないことが、読んでいただければ分かると思います。
 「推理の妙味」、大いに期待しておりますよ。本作に関しては、浅見の推理は実に論理的でしたね。結局どっちが犯人?というときの理由付けも見事でした。
 しかし、ブログで拙い書評(というか感想レベルだけど)を書いている私でさえ、表現には気を使って書いているのに、評論家という立場で、大新聞に掲載する影響を考えていないのでしょうかねぇ。390

 ところで、今回のヒロインは、始めは“該当者なし”としていたのですが、浅見光彦 the complete~】(長いので省略!)にならって、郡池愛としました。でも、浅見は愛から「おじさん」と呼ばれてしまって、残念ながら恋愛対象とはならなかったようで・・・(笑)

■評価(5個が最高)

 

◆トリック度

267267

◆冷や汗度

404404404

◆満足度

★★★★

■特におすすめ!

  • 宮沢賢治の作品が好きな方283
  • 大仕掛けのトリックだけがミステリーではない!に賛同できる方
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Comments 2

すくね  

ヒロインなしですか!(苦笑

 そういえば、ミステリー紀行でこういう話がありましたねー。内田作品を『本格ミステリー』という範疇に強引に収めようとするからこういう論評になるのかな~と思いつつ読んでおりましたが・・・。
 私が内田作品の醍醐味として考えているのは、「なんで事件が起こったのか?」という描写なのかな?と考えています。ミステリーという以上、トリックや犯人追及などの論理性を高めるべきだという考え方もあるのでしょうけど、自分の考えるミステリー性を強引に主張する手法は私も感心しませんね・・・。

 翠香さんは、本作と「萩原朔太郎」の亡霊」の共通性について言及されていらっしゃますね。仰るとおり被害者に見立ての要素があることや、表題のつけ方はかなり似ていますよねー。さすがアサミストです!
 私が本作と似ているな~と思ったのは、展開が似ているという意味なのですが『「紅藍の女」殺人事件』と似ていると思いました。
①過去の出来事からある人物が犯人と思われる。
②実は、その人物は事件とは関係なく、別の人物がその人物の犯行と思わせていた。
 あまり書くとネタバレになりますのでこのあたりで・・・。でも、どことなく論理展開は似ているような印象は受けております。

 しかし、本作のヒロインはなしですか!? まあ、確かに15歳ですし、光彦の恋愛対象にはならないですから、翠香さんの基準だとヒロインにならないですね(苦笑。と言いながら、私は以前のレビュー『しまなみ幻想』で、15歳でヒロイン認定しちゃってます(笑。多分、本作のレビューを書いたら、何も考えずにヒロインに認定してしまっているような気が・・・。う~む、少し翠香さんを見習って、ヒロインの認定基準を厳しくしよう!(苦笑。
そういえば、ドラマでは平山綾さんがヒロインをやってましたね。原作のイメージとはちょっと違っておりましたが、実は可愛いな~と思いながら見ておりました。少し、ロ○コン気味かもしれませんので、気をつけます~(笑。

2008/06/30 (Mon) 23:19 | EDIT | REPLY |   

翠香  

ミステリーは奥深いです。

すくねさん、コメントありがとうございます。
きっとこの評論家の方は、内田作品が好みでなかったのでしょうね。
評論家であるという思い上がりから、自分の好みのものは素晴らしく、そうでないものは駄作であるという、間違った判断をしてしまうのでしょう。
私はこのブログを始めてから、色々な作家さんのミステリーを読むようになりましたが、一口に「ミステリー」といっても本当に幅広いです。ひとつの枠の中に当てはめようとすること自体、無理な気がします。様々な形があっていいのではないでしょうかねぇ。それが作家さんの個性なのだし。

>『「紅藍の女」殺人事件』と似ていると思いました
確かにトリックは似ていますね。

すみません、ヒロインはやっぱり郡池愛としました。今回すごく迷ったのですよね~。浅見も「おじさん」と呼ばれるようでは終わっているな、と思ったので、一度はなしとしたのですが(笑) でも、この先10代のヒロインも多く登場するようなので、あまり“該当者なし”が多いのもつまらないですしね~。

そうそう、先日の榎木光彦の再放送分にこの【イーハトーブの幽霊】も入っているのですよね。内容忘れないうちに、ドラマレビューもしないとなぁ。

2008/07/01 (Tue) 22:51 | EDIT | REPLY |   

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