【花の下にて春死なむ】 北森鴻

◆◇◆大人の隠れ家◆◇◆

工藤哲也香菜里屋)シリーズ1
短編集
講談社 1998.11
  講談社文庫 2001.12
20第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作。

花の下にて春死なむ (講談社文庫)
花の下にて春死なむ (講談社文庫)北森 鴻

おすすめ平均
stars香菜里屋に行きたい
stars香菜里屋」シリーズ第一弾
starsグビグビ読ませる
starsミステリーというよりも
stars香菜里屋シリーズ

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■あらすじ

老いた俳人・片岡草魚が、自分の部屋でひっそりと死んだ。その窓辺に咲いた季節はずれの桜が、さらなる事件の真相を語る表題作をはじめ、気の利いたビアバー「香菜里屋」のマスター・工藤が、謎と人生の悲哀を解き明かす全六編の連作ミステリー。第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作。
(講談社文庫より)

■感想
 三軒茶屋駅から表のアーケード街を道一本外した細い路地を進むと、白くぽってりとした提灯が置かれている。そこがビアバー香菜里屋(かなりや)』。十人ほどの客が座れるL字カウンターと二人用の小卓が二脚だけの小さなお店。今日もマスター・工藤のもとに常連客たちが訪れ、推理合戦が始まる──。

 本作は、6編からなる連作短編集です。『香菜里屋』のマスター・工藤は、常連客たちの悩みや、遭遇した不思議なことなどを聞いただけで、全ての謎を解いてしまうという、いわゆる安楽椅子探偵物。個々の話は独立していますが、常連客は流動的にいくつかの短編に顔を出しており、また最初と最後は、ある老俳人についての話で繋がっています。
 ですが、どのお話もストンと腑に落ちる終わり方でないのが、残念。工藤の推理はほとんどが想像の域を出ておらず、キイナ的にいうと「・・・かも?」「・・・とか?」という程度のもの。それが、工藤が言うとあたかも真実のように常連客たちが受け止めているのもいまいち納得がいかなかったですね。

 しかし、この作品の魅力はなんといっても、『香菜里屋』で出される料理!どれもおいしそうなのですよね~。398また客の体調に合わせて違うアルコール度数のビールを出したり、ビールにあった料理を出してみたりと工藤のさりげない気配りもいい。こんなお店が家の近くにあったら通いつめてしまいそう。でも、マスターに心の中を見透かされそうで、ちょっと怖いな(笑)

 【花の下にて春死なむ】
 木造アパートの一室での老俳人の死と隣接するマンションでの若い女性の絞殺事件。無関係に見えた二人の死を『奇跡の桜』が結びつけた──。
 表題作とあって、これが一番ミステリーらしくて良かったですね。
 【家族写真】
  この短編のみ工藤から謎の提示があります。常連客たちはそれぞれ自分の推理を展開するわけなのですが、工藤の目的は常連客たちへ話の種を提供するためではなく、別のところにあったようで。
 【終の棲み家】
  これは始めの陰鬱な雰囲気から一変して心温まる話でした。このお話だけはちゃんとオチがありましたね。ただ、工藤がここまで想像できたことがちょっと説明不足な気がします。
 【殺人者の赤い手】
 このお話はちょっといただけない。同じパターンを2度使ったら、すぐ犯人が分かってしまいますよね。『赤い手』の解釈についてもかなり不満・・・。
 【七皿は多すぎる】
 回転寿司で鮪の皿ばかり7皿も食べた男の話をする常連客。この話の真意は?
 これには思いっきり肩透かし食らってしまいました。常連客たちはよってたかって暗号解読を試みるのですが、ええっ、そんなオチなの?という感じでしたね。
 【魚の交わり】
 1編目に出てきた老俳人には、空白の期間があった。そこには壮絶な秘密が隠されていた・・・。
 関係者はみな亡くなっているので、想像でしかなく、真実のほどは分かりませんね。
 最後に出てくる牡蠣のシチュー、食べてみたい!

■評価(5個が最高)

 

◆トリック度

267

◆冷や汗度

404404

◆満足度

★★★

■特におすすめ!

  • ビール275が好きな方!
  • グルメ嗜好271な方
  • 気軽に読めるミステリーをお探しの方
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Category: 工藤哲也(香菜里屋シリーズ)
Published on: Thu,  26 2009 22:58
  • Comment: 4
  • Trackback: 0

工藤哲也 香菜里屋 北森鴻 日本推理作家協会賞

4 Comments

viviandpiano  

No title

おすすめが、ビールが好きな人&グルメ嗜好の人というのが、
全てを物語っていると思います(笑)
でも、そのマスターのお店の様子も見てみたいので、
もし見かけたら手に取ってみようかな(^^)

有栖川氏の『山伏地蔵坊の放浪』も同じようなテイストの連作かな~。
かっこいいマスターのいるお店でミステリー談義ってところが。
こちらは、法螺話が好きな人はどうぞ♪という感じですけど(笑)

2009/03/01 (Sun) 00:22 | EDIT | REPLY |   

翠香  

viviandpianoさんへ

とにかくマスターの出す料理がどれも美味しそうなんですよ~。
このマスターも決してでしゃばることはせず、聞き役にまわるのですが、
自分のグラスのビールを舐めだしたら何か閃いたサインです。
表題作以外はトリックはあまりないので、本格物が好きな方だと物足りないかもしれません。

> 有栖川氏の『山伏地蔵坊の放浪』も同じようなテイストの連作かな~。
> かっこいいマスターのいるお店でミステリー談義ってところが。
> こちらは、法螺話が好きな人はどうぞ♪という感じですけど(笑)
これも面白そうですね。ちょっとチェック入れておきますね♪

2009/03/01 (Sun) 23:42 | EDIT | REPLY |   

結衣  

初めまして。
好きな作品や作家を多く取り上げて下さっているので嬉しいです。
この「花の下」は確かに「ミステリー」として推理を楽しむというよりは、
小説として雰囲気を楽しむ感じですね。
私は「花の下」と「魚の」に出てくる老俳人が好きで、
何となくじ~ん、としながら読みました。
北森氏の作品では「旗氏・冬孤堂」シリーズが好きです。
よければこれから時々書き込ませて下さいね。

2013/01/27 (Sun) 09:22 | EDIT | REPLY |   

翠香  

結衣さんへ

結衣さん、初めまして。コメントありがとうございます。

今日、ちょうど北森作品のレビューを載せたところです(那智先生です)。
香菜里屋シリーズは、皆でワイワイ推理合戦するものもありますけど、
何かこう、静かな時間が流れていく雰囲気がいいですよね。
冬狐堂シリーズも今年は読んでいこうと思ってます(^^)

作品について色々語るのが楽しいので、
これからもぜひコメントをお寄せくださいね~♪

2013/01/27 (Sun) 17:34 | EDIT | REPLY |   

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