FC2ブログ
毛髪再生

【日曜の夜は出たくない】 倉知淳

Category猫丸先輩
 2  0

◆◇◆二重三重に仕掛けられた作者の意図とは?◆◇◆

猫丸先輩シリーズ1
短編集
創元クライム・クラブ 1994.1
  創元推理文庫 1998.1

日曜の夜は出たくない (創元推理文庫―現代日本推理小説)
日曜の夜は出たくない (創元推理文庫―現代日本推理小説)
おすすめ平均
stars韜晦戦術は買えますが
stars面白いv
starsしまりのない連作
stars成立しないトリック
stars日常の謎を飄々と

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

■あらすじ

今日も今日とて披露宴帰りに謎解きを始めた猫丸先輩。新聞記事につられて現地へ赴くこともあれば、あちらの海では船頭修業。絶妙のアドリブで舞台の急場を凌ぎ、こちらでは在野の研究家然とする。飲み屋で探偵指南をするやら、悩み相談に半畳を打つやら・・・・・・天馬空を行く不羈なるおかたである。事ある所ないところ黒い上着を翻し、迷える仔羊の愁眉を開く、猫丸先輩ここにあり。
(創元推理文庫より)

■感想
 倉知淳氏のデビュー作で猫丸先輩シリーズ第1作です・・・が、【競作 五十円玉二十枚の謎】に佐々木淳というペンネームで執筆されているのが、事実上の猫丸先輩シリーズの第1作ということになります。
 ですが、ペンネームも違うし、アンソロジーの中の一作ということで、シリーズのカウントからは除外します。

  さて、この猫丸先輩、どういうお人かといいますと、小柄で猫のようなまん丸の目ねこ、黒いだぶだぶの上着を羽織り、長い前髪が眉の下まで垂れているという風貌。神出鬼没で好奇心旺盛、口達者で人を煙に巻くのが大好き。定職にはつかず、テレビのチョイ役で出たり、評論を書いたり・・・猫のように丸い目だから猫丸って呼ばれているのかと思ったら、れっきとした(?)名前のようです。といっても本名なのかは定かではないのですが・・・。

 本作は7つの短編集からなります。まずはそれぞれの短編について、以下に簡単にご紹介します。

 【空中散歩者の最期】
 マンションの側で一人の男が墜落死しているのが発見された。解剖の結果、その男は20m以上の高さから落ちたらしい。しかし、マンションの高さは約10mしかない。彼は空中散歩者だったのか?
 ちょっと物理学的知識が必要となるのですが、物理が大の苦手の私は猫丸先輩の推理を聞いても「?」でした(苦笑) なんとなく、それ無理なんじゃないかな~と思っていたら、どうも物理学的に破綻している推理のようで・・・。
 【約束】
 麻由とおじちゃんは公園の隅のベンチで毎日お話していた。ある日、おじちゃんは麻由に明日『魔法』を見せてくれると約束してくれた。それなのに、おじちゃんはその夜のうちにベンチでトーシしてしまった。
 事件に興味を持った猫丸先輩は、単独で公園を調べにやってきて麻由と出会います。さすがの猫丸先輩も麻由ちゃんにはタジタジでしたw
 【海に棲む河童】
 カズとシゲは水着ギャル目当てに恋ヶ浜にやってきた。・・・が、そこには陰鬱な風景が広がり、人っ子一人いない。仕方なく、「孤島巡り遊覧船」に乗り込むことにしたが、船頭はなんと猫丸先輩だった!・・・猫丸先輩、色んなバイトしてますねぇ(^^;) 
 猫丸先輩たちの乗った船は見事転覆、近くの小島で夜明かしをするハメに。ひまつぶしにシゲが語った昔話の裏に隠された真相を猫丸先輩が推理します。
 昔話と現状とのリンクが面白いですね。昔話の解釈もちょっと民俗学的で興味深かったです。
 【一六三人の目撃者】
 舞台の演技中に俳優が服毒死した。彼が飲んだ酒の壜にはニコチンが混入されていたが、客入り前に毒は入っていなかった。163人の観客が見守る中でどうやって犯人は毒を入れたのか?
 今度は猫丸先輩が舞台俳優に!機転をきかせて、無事舞台を終わらせたのも鮮やか。意外な才能があったのですねぇ。
 【寄生虫館の殺人】
 フリーライターの壇原は、取材の為寄生虫博物館にやってきた。2階の展示フロアーを物色していると、物好きな男がもう一人、展示フロアーに現れた・・・猫丸先輩である。壇原たちが3階へ行くと、受付嬢が殺されていた!しかし、エレベーターは点検中で使用できず、その間階上に上がってきたのは、もう一人の職員の男のみ。いったい彼女はいつどうやって3階に上がったのか?
 【生首幽霊】
 NHKの集金人の八郎は、あるアパートに住む女性にひどい目に遭わされた。意趣返しをするべく、夜に再びアパートを訪れると、彼女の部屋の鍵が開いていた。そっと中を覗くと、彼女の生首が「呪ってやる」と呻いた・・・。
 このトリックは分かりました~v(^^) でもこんな手の込んだことするかな~?
 【日曜の夜は出たくない】
 日曜日ごとにデートをして、彼女のアパートの前まで送ってくれる彼。ある日曜日、彼女を送った後、彼らしい後姿を見かける彼女。折りしも彼女の近所では連続切り裂き魔が跋扈していた。もしかして彼が連続切り裂き魔の犯人なのではないか?疑心暗鬼になった彼女は「あの人」に相談することに。
 ちょっと時代を感じる作品。今は皆携帯電話を持ってますし、固定電話もナンバーディスプレイがあるし、使えないトリックですね。

 ご覧の通り、バラエティに富んでいるのが分かります。もちろん猫丸先輩はシリーズキャラなので、どの短編にも登場し、謎解きをするのですが、最初の短編【空中散歩者の最期】で「僕」という一人称が語り手となっていたので、このシリーズは「僕」が語り手なんだな、と思ったらそうでもない。猫丸先輩の後輩である八木沢もシリーズキャラらしいのですが、八木沢が登場するのは3編のみ・・・とバラバラで統一性がない。
 しかし、実はこれ、作者の狙いでした(^^;) 7編の後ろに【誰にも解析できないであろうメッセージ】という章があって、ここでは作者が出来上がった7編を猫丸先輩に見せるというメタっぽい設定になっています。そこでこの短編集の中にはあるメッセージが隠されていることが語られています。
 う~ん、確かに、「あの人はたしか別の短編に出ていたあの人だよね?」って箇所がありました。何か関連性があるのかな?と思っていたらそのまま終わっちゃったのだけど、そういうことだったのか~!
 でも、章題にあるように、このメッセージは誰も解析できませんよぉ。もしこれから読まれる方は挑戦してみます?万が一分かったところでだから何?ってレベルだけど(^^;)

  さらにもう一章【蛇足──あるいは真夜中の電話】がありまして、え~、まだ何かあるの?と思ったら衝撃の真実が語られていました!
 そう、【寄生虫館の殺人】での猫丸先輩の推理はちょっと腑に落ちなかったんです。どうやら『作者』が意図的に捻じ曲げた推理だったようですね。
 作品全体として、ちょっと奇をてらい過ぎた感がありますね。アイデアとしては面白いのだけど、前もって何かあるぞというのを匂わせてくれないと、誰も気付かない(^^;)
 後ろのおまけ2章は不要という意見もありましたが、それだと7編が統一性がなく、凡庸なものになってしまうし、その辺りのバランスがもうひとつだったかな。

■評価(5個が最高)

 

◆トリック度

267267267

◆冷や汗度

404404

◆満足度

★★★

■特におすすめ!

  • クイズ・パズルが好きな方
  • 気軽に読めるミステリーをお探しの方
スポンサーサイト

最後までお読みいただきましてありがとうございました。
下のバナーをクリックしていただけるとさらにやる気UPしますので、
応援よろしくお願いいたします。
ブログランキング・にほんブログ村へ      blogramのブログランキング  

猫丸先輩倉知淳

2 Comments

viviandpiano  

おお~

こちらが猫丸先輩シリーズの最初なんですね☆
書名だけは良く知っているのですが、
まだ読んでいないので、そのうち頑張りたいです。

ミステリ的には「日常」ということで地味ではあるのですが、
私はこの猫丸先輩のキャラ&サブキャラの味の深さに、
かなり興味を持ちました♪

2009/09/25 (Fri) 03:03 | EDIT | REPLY |   

翠香  

viviandpianoさんへ

猫丸先輩シリーズは日常の謎モノだという話ですが、
この作品に関しては、1つの短編につき1人死んでいるんですよね(^^;)
中には安楽椅子探偵モノもあって、全てに関与している訳でもないのですが。

猫丸先輩って、神出鬼没で謎の多い人物ですよね(^^;)
でも八木沢くんの立場にはなりたくないな(笑)

2009/09/25 (Fri) 23:18 | EDIT | REPLY |   

コメント&トラックバックに関する注意

コメントについて

他者を誹謗・中傷、宣伝目的、公序良俗に反する書き込みは固くお断りします。
そのような書き込みは管理人の判断で削除いたします。
また、作品を未読の方もご覧になりますので、ネタバレにはご注意ください!
くれぐれも犯人の名前やトリックなどを書き込まないように願います。
どうしてもネタバレの内容を語りたい方は、SECRET(管理者にだけ表示を許可)にチェックを入れて
ナイショのコメントにしてくださいね。

トラックバックについて

言及リンクのないトラックバックは受け付けません。
言及リンクとは、トラックバック元の記事(貴方が書いた記事です)に
当記事へのリンク及び当記事の紹介(または感想)が含まれているものを指します。
それ以外はトラックバックスパムと見なす場合があります。
トラックバックスパムと見なされた場合、予告なく削除することがあります。

なお、コメント・トラックバックともにスパム防止のため承認制を採らせていただいています。
記事に反映されるまで時間がかかることがありますが、しばらくお待ちくださいね(^^)
また、コメント・トラックバックのルールについては、
Love knot~ミステリ&フィギュア通信~の歩き方にも記載しておりますので、
合わせてご一読ください。

Post a comment