【僧正殺人事件】 S・S・ヴァン・ダイン

◆◇◆誰が殺したコック・ロビン?◆◇◆

ファイロ・ヴァンスシリーズ4
長編
創元推理文庫 2010.4


僧正殺人事件 (S・S・
ヴァン・ダイン全集)
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書評

■あらすじ

だあれが殺したコック・ロビン? 「それは私」とスズメが言った―。四月のニューヨーク、この有名な童謡の一節を模した不気味な殺人事件が勃発した。マザー・グース見立て殺人を示唆する手紙を送りつけてくる“僧正”の正体とは? 史上類を見ない陰惨で冷酷な連続殺人に、心理学的手法で挑むファイロ・ヴァンス。江戸川乱歩が称讃し、後世に多大な影響を与えた至高の一品。
(創元推理文庫より)

■感想
  誰が駒鳥殺したの?
 「それは私」とスズメが言った──
 「私の弓と矢でもって、私が駒鳥殺したの」

  これは、イギリスの伝承童謡『マザー・グース』の1つで、『駒鳥の死と埋葬を悼む挽歌』の冒頭の一節。
  この歌の歌詞の通りに殺人事件が起こります。
  ロビンという名のアーチェリーの選手が、矢で心臓を一突きされて殺されていた。
 現場を立ち去ったのは、スパーリングという名の青年。スパーリングは、ドイツ語で“スズメ”を意味していた──。

  マザー・グースは、殺人や犯罪、残酷な事件を扱う歌が多いという性格上、ミステリーのモチーフに使われることが多く、
  上記の歌でも、被害者、犯人、目撃者(この後の一節に登場します)が揃っています。
  ちなみにこの本の解説は山口雅也氏なのですが、山口氏もマザー・グースをモチーフにしたシリーズを持っていますね。
  山口氏によると、マザー・グースを童謡見立て殺人として本格的に作品に取り入れたのは、本作が初めてだということです。
  この見立て殺人のアイデアも、その後のミステリーに多く取り入れられており、
 本作は、見立て殺人ものの先駆け的存在であると言えそうです。

  ただ、扱っているのがマザー・グースのためか、それほどおどろおどろしさは感じませんでした。
  横溝正史などの国内古典の方が、日本語で書かれているためか、恐怖心をそそりますね。

  本作は、アマチュア探偵・ファイロ・ヴァンスシリーズの第4弾です。
  このシリーズは、ヴァン・ダインファイロ・ヴァンスの事件簿を記録するというスタイルになっています。
  いわゆるワトソン役が事件を記録するというスタイルは、海外古典ではよくあるパターンなのですが、
  本作では、ヴァン・ダインの影が薄く、ほとんど事件に口出しはしないですね。
  筆記者に徹しているようで、「私」という一人称も数えるほどしかありません。

  タイトルは『僧正殺人事件』ですが、僧正が殺されるのではなく、犯人の署名が『僧正』なのです。
  『マザー・グース殺人事件』の方がしっくりくるのになぁと思っていたら、始めはこれで行こうとしていたそうです。
  でも、児童物に間違われるからと進言されて、断念したのだとか。
  う~ん、余計な進言したものですね(^^;)
  ただ、『僧正』が何を意味するのかが事件を解く鍵になります。
  事件はまさに二転三転、ついに犯人が明らかになったと思ったら、大どんでん返しが!
  いやあ、まんまと騙されました(笑)
 最後の最後まで気が抜けないので、心して読んでくださいね。

  本作は、ファイロ・ヴァンスシリーズの新訳刊行の第一弾ということですが、
  訳は、現代語訳で読みやすいですが、注が多いのが煩わしかったですね。
  人物注は、直下に括弧書きで書かれていますが、長いものは巻末にまとめられています。
  私は、しおりを2枚用意して対処しました(笑)
  ところが、原注・訳注は、本文の次のページから始まっていて、見開きで右が本文、左が原注・訳注になっています。
 本文の最終ページの頭に結論というべき一文がありまして・・・これ、注を見るつもりがうっかり読んでしまいそう。
 本の構成に関することですが、もう1ページ開けるなどの対処をして欲しかったですね。

  今回は「本が好き!」経由で東京創元社さまより本を頂きました。ありがとうございます。

■評価(5個が最高)

 ◆トリック度

267267267

◆冷や汗度

404404

◆満足度

★★★★

■特におすすめ!

  • マザー・グースが好きな方
  • チェスが好きな方
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Category: 海外ミステリ
Published on: Wed,  26 2010 23:48
  • Comment: 2
  • Trackback: 0

ヴァン・ダイン ファイロ・ヴァンス マザー・グース 見立て殺人

2 Comments

viviandpiano  

おお~

有名な作品ですけど未読です。
新訳が出たのですね☆
やっぱり読みやすさが一番ですけど・・・
巻末のページは注意が必要そうですね(^^;
騙されたいので、読んでみたいです♪

体調、良くなりましたか?
不安定な気候が続いているので、
お互いに体調に気をつけたいところですね。
やっと咳が収まっているので、ぶり返したくない・・・

2010/05/27 (Thu) 02:51 | EDIT | REPLY |   

翠香  

viviandpianoさんへ

巻末の注を見る時は気をつけたほうがいいですね。
もし同じ本を読まれることがありましたら、
本と同じぐらいの大きさの紙を間に挟んで、本文を隠してしまうのがいいかも。
読まないつもりでもうっかり目に入ってしまうことがありますから。

本作と『グリーン家殺人事件』がヴァン・ダインの代表作と言われているので、
『グリーン家』も読んでみたいです。

体調はようやく戻ってきました。お気遣いありがとうございます(^^)
viviandpianoさんも咳が収まってよかったですね。
これから梅雨の季節になるので、お互い体調には気をつけましょう。

2010/05/27 (Thu) 23:11 | EDIT | REPLY |   

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