Love knot~ミステリ&フィギュア通信~

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【メモリーを消すまで】 山田悠介

 19, 2010

◆◇◆消えた9時間の真実とは?◆◇◆

山田悠介(シリーズ外)
長編
文芸社2010.6

メモリーを消すまで 上
メモリーを消すまで 上
メモリーを消すまで 下
メモリーを消すまで 下

■あらすじ

犯罪防止のため、全国民の頭に埋められたメモリーチップ。
「記憶削除」を執行する組織MOCの相馬誠は腐敗はびこる所内の権力闘争に巻き込まれていく。
実権を掌握しようとする黒宮の、真の目的はなんなのか?
そして、争いに巻き込まれたストリートチルドレンの悲劇とは?
「消えた9時間」をめぐる戦慄のストーリー!!
(文芸社より)

■感想
 若手人気作家として知られる山田悠介さん。(なんとまだ20代!
 気になってはいたものの、ホラー色の強い作風のようなので、今まで手が出せずにいました。
 ところが今回、運よく献本を頂いたので、最新刊を読む機会を得ました。
 黒とピンクの上下巻のセットで、装丁もインパクトありますね。
 上下巻というとかなりボリュームがありそうな気がしますが、全体で535ページで、1ページの活字量はそれほど多くなく、文体も平易なので、わりとすんなり読めると思います。

 時代は21世紀末。日本の治安は悪化し、凶悪犯罪が増加。特に急増するストリートチルドレンは各地を拠点に犯罪を繰り返し、社会問題化していた。
 事態を重く見た政府は『記憶削除法』を制定する。見たもの聞いたこと全ての記憶が保存されるメモリーチップを全国民の頭に埋め、犯罪が起きた際には証拠とするばかりか、更正不可能と判断された犯罪者へ『記憶削除の刑』を執行するというものだった。
 悪用された場合、社会が大混乱に陥ることから、『記憶操作官』は国家試験をクリアした国家公務員が務め、記憶操作機関MOC(Memory Operation Center)は巨大化、厳重に管理されることとなる。
 ところが、制度が始まって半世紀以上が経ち、組織は腐敗し、不正が蔓延、所員は権力闘争に明け暮れていた──。

 頭にメモリーチップを埋め込むという発想は斬新ですね。
 ただ、脳とメモリーチップ間での記憶の連携メカニズムがまったく説明されていないのが気になりました。
 初めから技術的に出来ることが前提で話が進んでいます。
 だから現代ではなく、近未来に設定したのかもしれませんが・・・。
 私は記憶をテーマにしたミステリーを2、3作読んでいますが、どれも脳科学を研究し、記憶操作が可能になるというものだったので、『頭にメモリーチップ』には違和感を覚えました。

 また、再犯の恐れのある犯罪者の記憶を削除してしまうというやり方にも疑問。
 犯罪の記憶を消してしまえば、そもそも本人に罪の意識がなくなってしまうし、それで再犯率が下がるとも思えない。
 さらに重大な犯罪を犯した者には記憶全削除という重い刑が科せられます。
 肉体はそのままでも人格が消えてなくなるわけで、倫理的に問題があると思います。

 出世争いの舞台を記憶操作機関に置いたのは、自分たちが犯罪に手を染めた記憶を都合よく消してしまえる立場にあるからでしょう。
 関係者たちは皆、犯罪に関わった記憶を消してしまっているため、警察も確固たる証拠を上げることができず、関係者たちも、自分が何をしたのか分からず不安になり、パニックに陥っている。
 そんな混乱ぶりが滑稽でした。
 ある人物の過去に意外な事実があることが分かり、それが破滅へと繋がっていきます。

 ただ後味はあまりよくありませんでした。
 自分を犠牲にしてまで正義のために闘った主人公たちが結局巨大な権力の前には無力だったのが、残念でなりません。

 日本は世界的に見ても治安のよい国と言われていますが、物騒な事件が起こっている昨今、まんざらこの作品世界が絵空事とも思えませんでした。
 こんな日本になったら恐ろしいですね

■評価(5個が最高)

 ◆トリック度267267
◆冷や汗度404404404
◆満足度★★★

■特におすすめ!

  • 近未来小説が好きな方
  • 社会派志向の方
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Tag:山田悠介

COMMENT 2

Mon
2010.07.19
18:29

viviandpiano

URL

あの

探偵Xの話を思い出しますね~。
記憶の操作か・・・

脳って複雑だから、そんな技術は不可能だろうけど、
開発にトライすることすら倫理的に問題ありですよね。
まあ、ミステリ上のSF設定なんでしょうね。

ある種の傾向の犯罪というのは、
(異常な暴力とか、快楽的犯罪とか)
脳の変異によって起こるとも言われているので、
脳の研究が進めば「治療」することも可能になったりして。
そういう未来だったら、いいんですけどね。

Edit | Reply | 
Mon
2010.07.19
23:34

翠香

URL

viviandpianoさんへ

そうそう、我孫子先生の『記憶のアリバイ』を思い出しますよね!
近未来設定で、犯罪の記憶を消してしまう所が良く似ています。
『パラレルワールド・ラブストーリー(東野圭吾著)』、『さよならバースディ(荻原浩著)』などは、
まだ研究段階で、猿を使って実験しているという設定でした。

犯罪に関する記憶と、苦痛を伴う記憶が上手くリンク出来れば犯罪も減らせると思うけれど、
闇雲に記憶を消してしまうのは問題ありますね。

Edit | Reply | 

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