【グラスホッパー】 伊坂幸太郎

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By翠香

◆◇◆死んでるみたいに生きたくない◆◇◆

伊坂幸太郎(シリーズ外)
長編
角川書店 2004.7
  角川文庫 2007.6

404384901Xグラスホッパー (角川文庫)
伊坂 幸太郎
角川書店 2007-06

by G-Tools

■あらすじ

「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに──「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!
(角川文庫より)

■感想
 テーマ読み特集【いきものがたり】第5弾は【グラスホッパー】です。
 グラスホッパー:そのものズバリ「バッタ」です。

 伊坂作品を読むのは、これが4作目です。
 前々から伊坂作品は自分の好みに合わないと感じていましたが、この作品で再認識してしまった
 【死神の精度】だけは、映画を先に観たからか、抵抗なく楽しめたのですが、
 この作品はハードボイルド系だったので、苦手+苦手という最悪の組み合わせになってしまった(^^;)
 どうも今回のテーマ読みはハードボイルド系が多いような・・・。決して狙ったわけではないのですが。
 ちょうど本作でテーマ読みは折り返しになりますが、後半はガラッと雰囲気が変わると思います(^^)

 グラスホッパーというタイトルから、元気に跳びまわる、楽しいイメージを持っていたのですが、
 あらすじにあるとおり、これは「殺し屋」小説です(^^;)
 物語は鈴木、鯨、蝉の3人の視点が交互に入れ替わるカットバック形式で進んでいきます。

 鈴木は、元教師だったのですが、「令嬢」という非合法な商売をする会社に入社します。
 それは「令嬢」の社長の息子に妻を遊び半分で轢き殺され、その復讐をするため。
 しかし、鈴木と同じ目的で潜入してくる社員は多く
 (つまりそれだけその息子はあちこちで悪さをしているってことです)、会社側では考えは全てお見通し。
 そこで会社への忠誠心を試すため、薬で眠らされている若い男女を殺せと命じられる。

 鯨は身長190cm、体重90kgという巨漢。(大きいから「鯨」なのでしょう)
 鯨は直接手は下さず、相手に遺書を書かせ、首吊りあるいは飛び降りをさせる「自殺屋」。
 鯨を見ると何故か人は死にたくなってしまうらしい。
 しかし鯨は自分が自殺させた人間の亡霊に悩まされていた。

 蝉は岩西という男から仕事を斡旋され、殺しを行う、いわゆる殺し屋。
 岩西に対し、いつも不平不満を口にしていてうるさいので「蝉」。

 始めは3人の物語がバラバラに進行していきますが、「令嬢」の息子が「押し屋」と呼ばれる殺し屋に押され、
 車に轢かれたことを機に徐々に3人の物語が繋がっていきます。
 しかしまあ色々な殺し屋がいるものですね(^^;) この作品、まともな人種がほとんど出てこないのですよね。
 唯一、鈴木だけが真面目でお人よしという人物。
 伊坂作品では、一般的な男性を主人公に据えることが多いですが、それだけ作品世界が異質ということなのでしょう。
 正常と異常の対比があるからこそ、異常なものが引き立つわけです。
 それから「鯨」、「蝉」など漢字一文字の呼称も伊坂作品らしい。
 押し屋は「槿」(「むくげ」ではなく「あさがお」と読ませる)だし。

 鈴木が押し屋を尾行し、成り行き上、槿の家族と触れ合うことになります。
 危機感を募らせながらも、奥さんのすみれ、息子の健太郎、孝次郎とのやりとりは微笑ましく、ホッと出来ますね。
 でもこれにも仕掛けがあるので要注意です。一部は見破ったのですが、まさかここまでとは・・・。

 ラストシーンはわりと好き。どれが現実で、どれが幻覚なのか、不思議な感覚になりますね。

■評価(5個が最高)

 ◆トリック度267267267
◆冷や汗度404404404404
◆満足度★★

■特におすすめ!

  • ハードボイルドが好きな方

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Comments 4

ジオ  

伊坂幸太郎は苦手ですか

私も好きではないものもありますし、最近はどんどん理解できない方向に行ってる感があります。
基本的に文庫にならないと読まないので新しいのは読んでいませんが、「あるキング」は古本屋で見つけて野球選手が主人公の小説なんておもしろそう、と思って買ってみたら、物の見事に裏切られました。
どこかで伊坂幸太郎がこの作品に関して、「書きたいように書いた」だか「自分の読みたいものを書いた」と言ってました。

また映画にもなった「ゴールデンスランバー」は伊坂節全開で意外なところで登場人物たちがつながっていくのですが、尻切れトンボのようなラストで置いてけぼりを食らわされました。
この傾向が続くようだと今後積極的に読む作家ではなくなりそう。

ですが、今まで読んだ中でのお気に入りは「チルドレン」と「アヒルと鴨のコインロッカー」です。
また「死神の精度」「フィッシュストーリー」「終末のフール」「陽気なギャングシリーズ」「砂漠」もなかなかおもしろいですよ。
伊坂ファンには人気が高い「重力ピエロ」は好きではないです。

伊坂幸太郎は言葉遊びのような独特のセリフと、そこがそこにつながってたんかい、と思わされるストーリーの意外性を楽しむ作家だと思います。
また全体的に映画のようなちょっと現実離れした世界観が多いのも特徴なので、そこを楽しめるかどうかが分かれ目かもしれませんね。
そういう世界観が映画にしやすいので、最近量産されているのだと思います。

とにかくあまり難解な方向に行くのではなく、ライトな方向で進んでほしいなぁと思ってます。

2011/06/30 (Thu) 01:06 | EDIT | REPLY |   

翠香  

ジオさんへ

コメントありがとうございます。
伊坂作品・・・苦手なんですよ~(^^;)
現実離れした世界観もそうなのですが、
殺人や性的虐待に快楽を求める悪の存在が作品ごとに登場するので、嫌悪感が先に立ってしまって・・・。
最終的に悪人に制裁が加えられても、あんまりスッキリしないのですよね。
4作読んで3作がダメだったので、おそらく私には合わないのでしょう。
『死神の精度』は、映画が素敵なファンタジーだったので、唯一抵抗なく読めました。
『アヒルと鴨~』は、色々な賞を総なめしていたし、ブロガーさん達にも薦められたこともあり、
期待値が大きすぎたのかもしれません。
『重力ピエロ』は始めの数ページで挫折しましたv-356
『陽気なギャング~』は、映画は観ましたよ。面白かったです。

ジオさんは伊坂作品、たくさん読まれているのですね。
おススメしていただいて申し訳ないのですが、こればかりは好みの問題なので・・・。
『終末のフール』は積読しているので、そのうち読むかもしれませんが、
新たに買って読むことは多分しないと思います。

2011/07/01 (Fri) 00:19 | EDIT | REPLY |   

あかね  

確かに。。。

伊坂作品は、登場人物たちの会話や思考(考え方)が洒落ていて哲学的で・・・そういう部分は私も楽しめて好きなのですが、ミステリとしては、ちょっと違う系統ですよねi-228
なんだかんだで
私も読んだことがあるのは「重力ピエロ」「ラッシュライフ」「死神の精度」だけでした(笑)i-237

なかなか読めていない作家さんi-265

「アヒルと鴨」を映画で観ただけで、読んだ気になってたりとか(笑)→映画はめちゃくちゃ好きでしたi-1

今も伊坂作品読んでますがi-201中々苦戦中i-229ハマると早いのだけれどもi-278


「グラスホッパー」では、私は鈴木の潜入捜査?の理由に思わず笑ったりi-239当たり前だけど、一番「ふつう」寄りの鈴木視点を楽しんじゃってましたi-185

2011/07/02 (Sat) 14:18 | EDIT | REPLY |   

翠香  

あかねさんへ

確かに会話は哲学的ですよね。
どの作品を読んでも同じような印象を受けるので、
きっと表現したい世界観があるのでしょうね。
ただ作品としては良くても使っている材料に嫌いなものが入っているとそれを端に除けるでしょ?
なので、余計に嫌いなものが目に付いてしまう・・・そんな感じでしょうか。
趣味で読書しているので、無理に苦手なものに向き合わなくてもいいのかなと思っています。

『アヒルと鴨~』は、逆に原作のみなので、映画だとアレをどう表現しているのかが気になりますね。

本作は、鈴木と槿の「家族」のふれあいがほのぼのとして楽しめました。
あと余韻の残るラストシーンは好きですね。

2011/07/03 (Sun) 23:04 | EDIT | REPLY |   

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