Love knot~ミステリ&フィギュア通信~

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【わくらば日記】 朱川湊人

 26, 2011

◆◇◆虹の彼方に見えた景色は・・・。◆◇◆

わくらばシリーズ1
短編集
角川書店 2005.12
  角川文庫 2009.2
発見!角川文庫2011対象本


■あらすじ

姉さまが亡くなって、もう30年以上が過ぎました。お転婆な子供だった私は、お化け煙突の見える下町で、母さま、姉さまと3人でつましく暮らしていました。姉さまは病弱でしたが、本当に美しい人でした。そして、不思議な能力をもっていました。人や物がもつ「記憶」を読み取ることができたのです。その力は、難しい事件を解決したこともありましたが・・・・・・。今は遠い昭和30年代を舞台に、人の優しさが胸を打つシリーズ第1作。
(角川文庫より)

■感想
 初朱川湊人作品です。朱川さんといえばホラー小説のイメージが強く、自分の守備範囲外だったのですが、
 表紙の賑やかな雰囲気に惹かれ、手にとってみました。もちろん本作はホラーではありません。
 ハッピーエンドで終わらないものもありますが、全体として優しい雰囲気に包まれた作品群です。

 物語は和歌子という女性が、子供時代を回顧する形で進んでいきます。
 時は昭和30年代。お化け煙突の見える下町で、和歌子は病弱な姉・鈴音と母の3人で暮らしていました。
 (父親は何か事情があって一緒には暮らしていなかったようです)
 実は姉の鈴音には特殊な能力が備わっていました。人や物から過去の出来事が「見える」のです。
 この能力があれば、どんなトリックを使おうと全てお見通しになってしまうので、
 ミステリとして成立しなくなってしまいますが、本作は謎解き中心のミステリにはなっていません。
 むしろ過去を「見る」ことによって、深層に潜んだ人間の痛みや悲しみが見えてくるのです。

 なお、タイトルの「わくらば」には「若葉」と「病葉」の二つの意味があるそうです。
 和歌子と鈴音、対照的な姉妹を暗示する言葉のようです。


【追憶の虹】
 和歌子の親友の弟が車に当て逃げされた。しかし、誰も車のナンバーを覚えておらず、
 犯人の割り出しは難航していた。
 鈴音は和歌子に頼まれ、現場を「見る」が、警察に届けるのは待ってほしいという。
 しかし和歌子は姉の言葉を無視し、姉が「見た」内容と姉の能力を交番勤務の巡査に話してしまう。

  思慮が足りないといえばそれまでですが、小学生ぐらいの時って、自分の知りえたことを
 得意げに話したくなる年頃ですよね。
 和歌子のせいでもっと凄惨な殺害現場を「見る」羽目になった鈴音が気の毒でした
 でも本庁の刑事さん、見かけによらずいい人でよかったです(^^)

【夏空への梯子】
 駒ノ辺高校で女子生徒が殺害される事件が起きた。犯人はRという朝鮮人の少年だったが、
 Rは逮捕前、新聞社や警察に電話を掛けて来たり、被害者の遺品を送りつけたりという不可解な行動をとっていた。
 本庁の刑事・神楽は鈴音にRのことを「見て」ほしいと頼み込む。

 この時代はまだ差別意識が強かったのでしょうね。でも今でもなくなったとは言いがたいですが・・・。
 章題の梯子とは、建設中の東京タワーが空に架かる梯子のように見えたということなのだけど、
 人間がバベルの塔を作ったことによって差別が生まれたという皮肉と見るのは深読みしすぎでしょうか。

【いつか夕陽の中で】
 村田のおばさんの親戚だという茜が和歌子たちの母の元で洋裁の仕事をすることになった。
 ある日、和歌子は玄関先で小さな巾着袋を拾う。どうやら茜が落としたものらしいが、
 袋に血が付いていたため、鈴音は茜の過去を「見て」しまい・・・。

 親しくしていた人が急によそよそしくなったら、悲しいですよね。
 和歌子たちの母が話して聞かせた「不思議な鏡」、まさにその通りだと思います。
 それにしてもこのお母さんには驚きました。女所帯で暮らしていくには母もたくましくないといけないのですね。

【流星のまたたき】
 和歌子と鈴音は茜と同じアパートの住人で慶応の学生・笹森と親しくなる。
 鈴音は笹森に恋心を抱き、笹森の為に例の力を使いすぎてしまい、熱を出して寝込んでしまう。

 これは切ないですね。似た者同士、惹かれあってしまったのでしょうか。
 でも鈴音も可愛らしいところがありますね。実は非公式ながら人類史上初の快挙を成し遂げていたのには驚きです。

【春の悪魔】
 和歌子は母の使いで南千住に住むクラさんの元へ生地を届けに出掛けた。
 クラさんが留守だったので、時間を潰して再び訪ねると、クラさんが慌てた様子で帰ってきた。
 ちょうどクラさんが留守にしていた時刻、近所で殺人事件が起こっていた。なんとクラさんがその容疑者だという。

 やり場のない悲しみを嘘で隠してしまう優しさもあれば、真実を伝える優しさもある。
 優しさにも色々な形があるのですね。
 50代ぐらいの方には和歌子たちが口ずさむ流行歌を懐かしく思うことでしょう。
 茜の身の上に何かあったと匂わせる終わり方が気になりました。
 つい最近続編が出ましたが、気になるけど読むのもちょっと怖い気もします。

■評価(5個が最高)

 ◆トリック度267
◆冷や汗度404404404
◆満足度★★★★

■特におすすめ!

  • 昭和30年代に青春を過ごした方
  • ノスタルジックな雰囲気に浸りたい方
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Tag:朱川湊人 わくらば

COMMENT 2

Wed
2011.09.28
20:27

mokko

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わーい♪

朱川作品は「かたみ歌」しか読んでないんだけど
それも懐かしい雰囲気というのが作品に溢れていて
すごく優しい物語だと思ってたけど
本作もそうなんですねぇ~
ブロ友さんがちょうどレビューをアップしていたので
チェックしてたんですよぉ~
続編も出てるらしいですよ

あれ?翠香さんって「かたみ歌」買ってますよね?
読んでないだけ?(^◇^;)

Edit | Reply | 
Thu
2011.09.29
00:13

翠香

URL

mokkoさんへ

昨秋の「世にも奇妙な物語」で『栞の恋』に感動して、
勢いで「かたみ歌」を買ったのですが、まだ読んでないです(汗)
普段目に付かない場所に仕舞いこんでしまったので、つい存在を忘れてしまう(^^;)

特によかったのが『流星のまたたき』ですね。
『栞の恋』と同様、切ないけれど優しいラブストーリーになっています。

続編はこの間、本屋で実物を見ましたよ!
浅野いにおさんの表紙イラストが可愛くて気に入っているのですが、
続編も同じアングルで、少し大人になった姉妹が描かれています(^^)
その時は買わなかったのだけど、いずれ買うつもりです♪

Edit | Reply | 

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