Love knot~ミステリ&フィギュア通信~

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【「花のいのち」殺人事件】 宮田俊行

 23, 2011

◆◇◆林芙美子vs太宰治◆◇◆

宮田俊行(シリーズ外)
長編
海鳥社 2011.10


■あらすじ

昭和5年、帝大生の津島修治(のちの太宰治)が鎌倉の海岸で心中事件を起こす。カフェの女給「花ちゃん」だけが死に、殺人事件ではないか、と女給たちから「姉さん」と慕われていた林芙美子が探偵役を引き受ける。
 津島は青森の大金持ちの息子で、担当の刑事も同郷ということから、芙美子はますます疑いを深める。青森まで行ってついにその罪を暴くが、そのときにはもう津島は起訴猶予となっていた。
 以来、芙美子が生涯書き続ける「花のいのちは短くて」という詩は、花ちゃんの無念を訴える犯人へのメッセージだった。
 太宰の小説の主人公である「大庭葉蔵」が、麻薬中毒の太宰から分離して、いろんな人間に取り憑いていく。大庭は太宰を恨んでおり、芙美子と協力してついに太宰を死に追い込む。
 死後刊行された「人間失格」を読んだ芙美子は、そこで太宰が自分の罪を詫びていることを知り、許す気になる。それに応える「浮雲」を書き終えた芙美子も心臓の持病で死ぬ。
 織田作之助や川端康成、井伏鱒二などたくさんの作家が登場する文芸ミステリー。
(「本が好き!」概要より)

■感想
 テーマ読み「音楽とミステリ」はひとまずお休み。ちょっと献本が溜まってしまったので、消化せねば(^^;)
 これは、「本が好き!」様からの献本です。ありがとうございます。

 この物語は、太宰治が起こした(最初の)心中事件から端を発しています。
 太宰だけが生き残り、道連れにした女給の花ちゃんだけが死んでしまう。
 女給仲間が花ちゃんは殺されたのだと林芙美子に訴え、
 芙美子自身、女給の経験があったので、「女給の名誉のために」と立ち上がります。
 実在の作家を登場人物に据えているところがユニークですね。

 太宰治の『富嶽百景』を中学生の頃に読んだのですが、
 子供心に随分ひねくれた考えを持っている人だなと思いました。
 太宰は厭世観の塊のような人で、3回も心中事件を起こしています(うち1件は未遂)。
 死にたきゃ勝手に一人で死ねばいいのに、一人では死ねないのが意気地がないというか(苦笑)
 まあなかなかの色男だったようで、お馴染みの頬杖をつくポーズがアンニュイで
 当時の女性たちが放っておけなかったのでしょうかねぇ。
 いったい何人の女性に「一緒に死んでくれ」って言ったのだろう(^^;)

 巻末に挙げられている参考図書が物凄い数だったので、史実に基づいて書かれた作品だと思われます。
 林芙美子さんは、随分と勇ましい女性だったようですね。
 さすがに探偵の真似事まではしなかったでしょうけど(笑)
 それでも太宰に会った時にはチクチクと辛らつなことを言ったりしたのかもしれませんね。
 本作は、昭和のはじめから芙美子が亡くなった昭和26年までの出来事が描かれていますが、
 やはり当時の女性の地位は低かったのだなとひしひしと感じました。
 芙美子は今の時代に生まれていたら、もっとバリバリ活躍していたのだろうなぁ。

 太宰や芙美子だけでなく、織田作之助や川端康成、井伏鱒二などたくさんの作家たちが登場します。
 現存の作家さんの作品でも、素顔が垣間見えるあとがきを読むのが楽しみのひとつなので、
 当時の文豪たちが生き生きと動き回るさまは、今まで作品を通してでしか知りえなかった
 作家さんの素顔が見られた気がして、楽しめました(^^)
 また、ちょっとした文学案内にもなりそうですね。
 ただ、内容が少し大人向けなので、中高生にはおススメできません(^^;)

 唯一残念だったのが、太宰から人格が乖離した大庭葉蔵という生霊を存在させたこと。
 (ちなみに大庭葉蔵というのは太宰の『道化の華』の主人公の名前です)
 史実と虚構を上手く絡ませた作品であるのに、もったいないと思いました。
 どうせなら太宰が多重人格で、太宰の別人格が動き出すとした方がリアリティがあってよかったかも。

■評価(5個が最高)

 ◆トリック度267
◆冷や汗度404404
◆満足度★★★

■特におすすめ!

  • 太宰治林芙美子の作品が好きな方
  • パロディものが好きな方
  • 昭和初期の文学作品に興味がある方
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Tag:宮田俊行 太宰治 林芙美子

COMMENT 2

Fri
2011.11.25
08:13

mokko

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オオーw(*゚o゚*)w

太宰作品はまだ読んだ事はないんだけど
人間失格は深夜アニメでやってたのを見ました。
その中に女給の花ちゃんのシーンが出てきたのを覚えてます
更に変な怪物みたいなのが太宰自身に取り憑いてるような
描写があったことを、このレビューを読んで思い出しましたぁ~

Edit | Reply | 
Sat
2011.11.26
00:16

翠香

URL

mokkoさんへ

へえ~『人間失格』がアニメ化されていたのですか!
私はさすがにもうアニメは観ないので、全く知りませんでした。
怪物・・・だから生霊を出してきたのかな。
私は生田斗真くん主演の映画を観てみたい。
生田斗真くんといえば、もうすぐ源氏物語の映画が始まるので、
そちらも観てみたい♪
やっぱり王朝文学が好きなんです(^^)

Edit | Reply | 

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