Love knot~ミステリ&フィギュア通信~

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夜想曲(ノクターン)考

 13, 2011

 この記事は、依井貴裕著【夜想曲(ノクターン)】のロジック部分について述べております。
 ハッキリネタバレしておりますので、作品を未読の方は、お読みになった後に当記事を読まれることをお勧めします。
 なお、ネタバレしていないレビューはこちら→【夜想曲(ノクターン)】 依井貴裕

 

 

 

 

 解決編では、新聞の配信と公務員の勤務形態から、作中作は時間の流れが逆に書かれており、
 それにより、犯行時に車のキーを所持していた者、ハンガーを所有していた者が変わることを論証していました。
 なかなか論理的で緻密だと思うのですが、ちょっと分かり辛いですよね(^^;)
 正直、こんなにガチガチに考えなくてもトリックと犯人は導き出せます。
 まあそれだけ作者は読者にたくさんのヒントを与えていたということなんですが。
 以下に本編では触れられなかった作者の「落し物」を拾ってみましょう(笑)

 

 第一章 第一の事件

 まずここで引っ掛かるのは、なんといっても「針金ハンガー」ですよね。
 山荘には備品がほとんどなく、各自が持参しないといけないので、
 ハンガーを譲るというやりとりが発生したのでしょうが、
 初見でも、ハンガーごときで何だかくどいなと、妙に印象に残った部分でした。
 こんな記述があります。

針金だけでできているので、簡単に曲げることができる。ハンガー以外の用途にも使える便利な品物だった。

 いやはやご丁寧なことで(^^;) ハンガーは別の用途に使えますよとわざわざ教えてくれています。
 そして麻美の「これがあれば・・・・・・」と洩らした言葉。
 当然この後には「プレートを取ることができたのに」と続くわけです。

 さらにこんな記述も。

このハンガーは、長谷川が持ってきたもので、桜木と一本ずつ使っていたという。村上はずっと持ってなかったらしい。

 尾羽夫妻はどうやら予定より遅れて到着したらしい。
 しかし、「夕食を済ましていてもおかしくない時間のはずはない」と書かれているので、
 額面通り一日目の記述ならば、せいぜい数時間の遅れでしょう。
 たかだか数時間のことなのに、「使っていた」、「ずっと持ってなかった」という表現はちょっと妙ですよね。
 でも三日目なら特に不自然でもありません。

 次に、麻美の事件が起きた時の刑事たちのやりとり。

 麻美は横山からのファックスに青ざめ、山下からの留守電に動揺していたという。
 この事実を刑事は「おもしろいこと」と表現し、他の刑事もその意味を理解していた。
 でも通信内容には特に不審な点はないらしい。じゃあ一体何がおもしろいのか?
 これは解決編にも書かれていましたが、麻美は死者からのメッセージを受け取ったから動揺していたのです。
 ずっと連絡が取れなかった麻美が何故二人が死んだことを知りえたのか、警察としては興味深いことですよね。

 さらに長谷川が「もう出ますか」と言った時の村上の反応。

「・・・・・・わ、私は嫌ですからね。あなたたちとは帰らないから」
(中略)首を大きく横に振り、身体全体で拒絶を表わしていた。

 確かに麻美が殺されたのだとすると、この中に殺人犯がいる可能性が高いので、警戒するのは分かります。
 でも少々神経過敏過ぎではないでしょうか。
 この後、村上は風呂に入らないで警戒はしているものの、
 他の二人に対し、これほどまでに拒絶の意志は見せていません。
 実際にはこの時点で3人が死んでいるのですから、激しい拒絶ももっともです。

 第二章 第二の事件

 この章は見かけも実際も同じ二日目です。しかし前後の事件が違います。

 やはり気になるのは、満のテレビ生出演でしょう。
 前日に妻があんな死に方をしたのに、翌日にテレビ生出演なんてありえません。
 前もって収録されていた番組ならば問題はないのですけど。
 やはりこの時点では、妻の麻美の事件はまだ起こっていなかったと考えるのが妥当でしょう。

 第三章 第三の事件

 三日目になって、横山がやってきます。
 二日目に集まりを中止することを伝えようとしたが、連絡がつかなかった為、結局来てしまった。
 それにしては村上たちの言動はちょっと不自然ですね。
 まずはこの場所で殺人事件が起こったこと、しかし中止の連絡がつかなかったことを説明するはずです。
 それなのに誰もそのことはおくびにも出さない。
 事件のことを横山に隠していた?
 そもそも隠す理由がないですし、現場はそのまま残っているので隠しようがないですよね。
 そう、まるで事件など起こってないかのような対応なのです。
 それもそのはず、この日が一日目で事件はまだ起きていないのですから。
 そして、最初の被害者は他ならぬ横山なのですから。

 次に翌朝、村上が今回の集まりを企画した理由を桜木たちに話す場面。
 息子を亡くした麻美を励ますためだったと言い、「いい企画だったでしょ」と問いかけている。
 麻美自身が亡くなり、さらに仲間がもう一人殺されたというのに、
 「いい企画」だなんて無神経にもほどがあります。
 ここは「いい企画だと思ったのに、こんなことになるなんて・・・」とすべきところ。
 こんなことにもあんなことにもまだなっていないから、「いい企画」だと言える訳なんですね。

 それにしても犯人、証拠残し過ぎですよね(^^;)
 菜箸にはたき、丸めた新聞紙・・・手の届かないところに入ったものを取ろうとしたことがバレバレです。
 プレートの回収を諦めたにせよ、せめて取ろうとした痕跡は消すべきではないでしょうか。
 もっともこの痕跡によって、一日目の「これがあれば・・・」発言に直結して犯人が分かる仕組みなんですが。
 このようにトリック重視の作品なので、物語としては不自然な描写が多々あるのです。


 いかがでしたでしょうか?
 他にも探せばまだ解決のヒントがあるかもしれません。
 自分はこうやって解いたなど、ご意見お聞かせください。
 普段のレビューは基本ネタバレなしなので、たまにはこういうネタバレOKな企画もやってみたいですね(^^)

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Tag:依井貴裕 夜想曲 ノクターン

COMMENT 2

Wed
2011.12.21
21:50

mokko

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見逃すところだったぁ

なるほどぉ~
最初読んでいて、なんてマドロッコシイ書き方をするんだろうって
思いながら読んでいたんですよ。
しかもどうでもいいところの描写がシツコイと思っていたのに
自己消化型なもので、この人は、こういう書き方をする人なんだと
勝手に思い込んで読み進めてました。
ミステリを読むには、引っ掛かりを引っかかりとして
受け止めないといけないのですよねぇ~
まぁ~こういう性格だから、思いっきり騙されては
大喜びできるんですけど( ̄▽ ̄;)ゞ

Edit | Reply | 
Fri
2011.12.23
00:04

翠香

URL

mokkoさんへ

うんうん。特に針金ハンガーの件はくどいですよね(^^;)
あれじゃあ嫌でも印象に残ってしまう。
もっとさりげなく書いてあったら、気付かずにスルーしていたかも。
それだけ読者に親切設計だったってことでしょうね。

私も普段はそんなに細かくチェックして読んでないですよ。
だから結構騙される(笑)
有栖川先生も以前、貴志祐介先生との対談で、
「読者への挑戦」に律儀に応じる必要はないとおっしゃっていました。
作家さんは読者を騙そうとして書いているのだから、
騙されてあげるのが良い読者だと思いますよ(^^)

Edit | Reply | 

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