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【オーブランの少女】 深緑野分

 07, 2013

◆◇◆甘美な毒を持った少女たち◆◇◆

深緑野分(シリーズ外)
短編集
東京創元社《ミステリ・フロンティア》 2013.10


■あらすじ

色鮮やかな花々の咲く、比類なく美しい庭園オーブラン。
ある日、異様な風体の老婆に庭の女管理人が惨殺され、その妹も一ヶ月後に自ら命を絶つという痛ましい事件が起きる。殺人現場に居合わせた作家の“私”は、後日奇妙な縁から手に入れた管理人の妹の日記を繙くが、そこにはオーブランの恐るべき過去が綴られていた。──かつて重度の病や障害を持つ少女がオーブランの館に集められたこと。彼女たちが完全に外界から隔絶されていたこと。謎めいた規則に縛られていたこと。そしてある日を境に、何者かによって次々と殺されていったこと。なぜオーブランは少女を集めたのか。彼女たちはどこに行ったのか?
楽園崩壊に隠された驚愕の真相を描いて、第七回ミステリーズ!新人賞佳作に入選した表題作ほか、“少女”にまつわる謎を描く全五篇を収める。
(ミステリ・フロンティアより)

■感想
これは読書メーターの献本プレゼントに当選した本。
倍率が高くてまさか当選するとは思わなかったので、びっくりしました。
文庫化するまでひたすら待つパターンがほとんどなので、
今回初めてミステリ・フロンティアのレーベルを手にすることが出来ました。
東京創元社様、ありがとうございます。

本作は5編からなる短編集です。
それぞれの短編の舞台は時代も国も異なるので、直接の関連性はないのですが、
全て少女が物語における重要な役割を担っています。

表題作『オーブランの少女』は、色とりどりの花が咲く美しい庭園・オーブランと
そこに現われる恐ろしい殺人鬼との対比が鮮烈な印象を与えます。
美しいものと醜悪・邪悪なもの──この対比がこの短編集に共通するテーマのように感じます。
ただ見た目だけの美醜にとどまらす、美しい顔の下に邪悪な心を持っていたりもする。
それはまだ不完全な少女ならではの残酷さや愚かさでもあるのです。

杉江松恋氏は本作から ダフネ・デュ=モーリア作『レベッカ』とバーネット『秘密の花園』を想起したらしい。
またミステリーズ!新人賞選評者である桜庭一樹氏によると
長編にして工夫すればアザリロヴィック『エコール』のようになるとも。
深緑野分氏自身もツイッターで『エコール』と『レベッカ』から多大に影響を受けたことを告白しています。
やはり見る人がみれば分かるものなのですねぇ。
私はまだまだ修行が足りませぬ。
『エコール』と『レベッカ』、チェックしようと思います。(特に『レベッカ』は気になる!)

ただ若干腑に落ちない点も。
『オーブラン』の終焉にこれだけ長い年月をかける必要があったのだろうか。
少女時代に持ち得た残酷性も年齢を重ねるうちに丸くなっていくものではないのか。
赦すというのではなく、別の決着のつけ方もあると思う。
同じ結末を迎えるにしても、体力のあるもっと若い時の方が可能性が高そうですが・・・。

『仮面』は、ヴィクトリア朝ロンドンが舞台。
ロンドンの霧のように全体的に陰鬱な空気が漂います。
タイトルが秀逸ですね。ここでは美醜がより効果的に生かされていると思います。
甘美な罠に落ちたあの人が哀れでした。

『大雨とトマト』は、場所は定かではありませんが現代のお話。
常連客の謎もオチも想像ついてしまった。

『片想い』のみ舞台は日本。昭和初期の高等女学校のお話です。
時代背景は北村薫氏のベッキーさんシリーズと重なりますが、
雰囲気としては米澤穂信氏の【儚い羊たちの祝宴】を想起しました。
女の子同士の世界ってまあ色々あります。私はそういうのを煩わしく思ってしまうタイプなんですが(^^;)
ちょっと甘酸っぱい記憶がよみがえってくるお話でした。

『氷の皇国』は全体の3分の1を占める中編作品です。
雰囲気としては米澤穂信氏の【折れた竜骨】に近いかなと思いました。
同じく米澤氏の【追想五断章】の中にあるリドルストーリーにも似た掌編がありました。
私はこの作品が一番気に入っています。
何でも自分の意のままにしてきた美しく聡明な皇女ケーキリアと、
ケーキリアの罠にかかった憐れな使用人の少女たちという身分差のある少女の対比。
使用人の少女たちの過酷な運命に胸が潰れる思いでした。
しかし、ここ一番での探偵役の登場にすっかり物語に引き込まれてしまいました。
暴君の鉄槌がいつ下されるかという緊張感の中の謎解きシーンは見ごたえがありましたね。
探偵役とケーキリアの対決にも注目です。

これだけ類似作が上がるということは独創性に欠けているのかもしれません。
そのあたりが大賞ではなく佳作止まりの所以なのかも。
それでも新人離れした力量は感じます。
今回は短編集でしたが、長編作品もぜひ読んでみたいですね。
深緑氏の今後の活躍に期待します。

■評価(5個が最高:★は1点、☆は0.5点)

 ◆トリック度267267267
◆冷や汗度404404404404
◆満足度★★★☆

■こんな方におすすめ!

  • ファンタジーが好きな方
  • ヴィクトリア朝時代の雰囲気が好きな方
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Tag:ミステリーズ 深緑野分

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