Love knot~ミステリ&フィギュア通信~

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【いちばん初めにあった海】 加納朋子

 22, 2015

◆◇◆つらい過去との決別、希望ある未来へ──◆◇◆

加納朋子シリーズ外
連作中編
角川書店 1996.8
  角川文庫 2000.5


■あらすじ

堀井千波は周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本、『いちばん初めにあった海』。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が…。差出人は<YUKI>。だが、千波にはこの人物に全く心当たりがない。しかも、開封すると、「私も人を殺したことがあるから」という謎めいた内容が書かれていた。<YUKI>とは誰なのか? なぜ、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか? 千波の過去の記憶を辿る旅が始まった―。
心に傷を負った二人の女性の絆と再生を描く感動のミステリー。
(角川文庫より)

■感想
今回からいよいよテーマ読みを開始いたします。
テーマ読み「水」、トップバッターは【いちばん初めにあった海】です。
まずは水の中でも一番広い海からスタート。「いちばん初めにあった」とくれば、一番手はこれで決まり(笑)

この作品、始めは一本の長編だと思っていました。ところが目次を見ると、表題作の他にもう一編が。
なかば拍子抜けしつつ読み始めました。

表題作は、堀井千波という女性が主人公。
アパートでの独り暮らしだが、周囲の騒音に悩まされ、引っ越しを決意。
部屋の整理の途中、本棚から『いちばん初めにあった海』というタイトルの本が目に留まる。
惹かれるように読み始めると、本の間から未開封の手紙が。
差出人は『YUKI』──千波は17歳の初秋に病気で入院したことがあり、本はその時の見舞いの品であろう。
早速高校の卒業アルバムから『YUKI』に該当する人物を探し出す。

一方、所々で千波の高校時代の回想シーンが挿入されており、
千波と転校生の麻子とのちょっと奇妙な友情が語られています。
千波にとって麻子はかけがえのない友達のはずなのに、どうやら麻子のことをすっかり忘れているようなのです。
千波の記憶に蓋をしているのは一体何なのか?

千波の心の鍵をこじ開け、荒治療を施した麻子。
千波には幾多の悲しい過去があったのです。でも失ったものばかりではなく、一つの希望がありました。
男性と比べると女同士の友情ってどこか冷めていると感じるのですが、これは素敵な友情物語でした。
・・・と、千波側から見ると、失った過去と友情を取り戻し、めでたしめでたしなのですが、
麻子側からすれば「人を殺したことがある」という衝撃的な告白も宙ぶらりんのままでなんとも消化不良に。

続くもう一編『化石の樹』は、植木屋でアルバイトをしていた若者が誰かに語りかける形になっています。
あれれ、全く別の話?ただ中編が二つ収録されているだけなのか・・・とちょっとがっかりしました。
加納さんといえば、独立したいくつかの短編の最後に全ての謎を収束させるという
連作短編がお得意のはずですから。

しかし、読み進めるうちに既視感があることに気付きました。
ピストルで撃たれた鳥のように・・・はて、どこかで見たような・・・。
そうなんです。二編はちゃんと繋がっていたのです。
しかもただ繋がっていただけでなく、彼は謎解きまで披露しているのです!
実は表題作を読んだ時点で、これはミステリではないと思っていました。
でも二編を合わせてみると、ちゃんとミステリとして機能していることが分かります。
やっぱり加納作品らしい仕掛けがあったのですね。

この作品には──すべての母なるものへ──という献辞があります。
本作には都合三人の母親が登場していますが、いずれも母としては未熟な女性ばかり。
でも子を想う気持ちはどんな母親でも同じなのですね。とても感慨深かったです。

■評価(5個が最高:★は1点、☆は0.5点)

 ◆トリック度267267
◆満足度★★★☆

■こんな方におすすめ!

  • 女性の方72
  • 前向きな気持ちになりたい方

◆テーマ読み「水」◆
テーマ読み「水」

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Tag:加納朋子

COMMENT 2

Sun
2015.07.26
09:56

mokko

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さすがに早!

いつもながらテーマ読みとタイトルでの進行のかけ合わせが
お見事です!
一番最初。なるほどぉ~と、初っ端からうなりましたよぉ~
そして、一見違ったように思える作品が実は繋がっていた
いいですねぇ~
加納作品は3作しか読んでないですけど、連作の形をとって
最後に見事に繋げるというのは好きです。
翠香さん的には、気持ち的なドンデン返しがあったので、
そういう意味ではよかったですね(p^_^q)

Edit | Reply | 
Sun
2015.07.26
11:12

翠香

URL

mokkoさんへ

もうタイトルを見た瞬間、これが1番手だ!と思いました(笑)
そういえば、毎回こんな言葉遊びをしてますねぇ。
きっと森博嗣センセイの影響に違いない(^^;)

加納さんは連作短編の名手ですね(本作は短編というより中編だけど)。
一つ一つのお話も読ませるのですが、
最後に一気に繋がる快感!いつもながら上手いなぁと思いますね(^^)

Edit | Reply | 

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