Love knot~ミステリ&フィギュア通信~

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【水の時計】 初野晴

 27, 2015

◆◇◆現代版『幸福の王子』◆◇◆

初野晴シリーズ外
長編
角川書店 2002.5
  角川文庫 2005.8
20第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作


■あらすじ

終末論が囁かれる荒廃した世界──孤独に生きるシズカの前に現れたのは言葉を話す不思議なサルだった。シズカを支えるためにやって来たという彼の名は、ノーマジーン。しかしその愛くるしい姿には、ある秘密が隠されていた。壊れかけた日常で見える本当に大切なものとは。
(ポプラ文庫より)

■感想
テーマ読み「水」、アンカーは【水の時計】です。
本作は第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作で、初野晴氏のデビュー作です。

このお話はオスカー・ワイルドの童話『幸福の王子』をモチーフとしています。
冒頭にこの童話の要約が載っているのですが、知っているお話なのに、読んでいてうるうるしてしまった。
ところが、いきなり物語は暴走族グループの抗争の話で始まったので、面喰ってしまった。
あらすじの内容と結びつかず、間違っているのでは?と思ってしまったほど。

脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、特殊な装置を通して会話することが出来る少女・葉月。
彼女は自分の臓器を移植を必要としている人々に分け与えたいと願っていた。
それはまさに自分の身体の金箔や宝石を貧しい人々に分け与えた王子の像の姿と重なります。
そして運び屋のツバメ役を担ったのが、暴走族の幹部の一人である昴。
ドナーになるには「生前の」本人の意思表示が必要。葉月の状態は医学的に生きているとは言えず、
いくら本人が希望しているからといって臓器移植を表沙汰には出来ない。
そこで隠密裏にしかもスピーディに運ぶために昴が選ばれたのだ。

幸福の王子』の話を現実の設定に置き換える為、様々な工夫がされているのが分かります。
葉月の身体から臓器が切り取られ、無残な姿になっていく様は痛々しく、胸が潰れる思いがしました。
しかし、これだけ生々しい現実を見せつけているのにもかかわらず、
ファンタジー設定が入ってしまっているのは、ちぐはぐな印象を受けます。
ツバメ役の設定にはかなり頭を使ったと思います。
いくら多額の報酬を用意したところで、こんな気の滅入る仕事(しかも彼自身も罪に問われてしまう)を
引き受ける人はそうそういないでしょうから。
昴は引き受けざるを得ない状況に追い込まれていたのですが、少々強引な話運びになっていますね。

臓器提供を受ける側にも様々な事情があり、ドラマがあったのは、よりいっそう切なく悲しい思いもしたのですが、
物語に膨らみを持たせた点では良かったと思います。
特に第四幕『鉛の心臓』は、昴の中学時代の恩師の話で心に残っています。
哲朗の決断は私には理解できなかったけれど、こういう考え方もあるのだなと思いました。

終盤につれて色々なことが繋がっていくのですが、昴と葉月との繋がりが思っていたより薄かったのが残念。
昴が運び屋を続けるうちに髪が真っ白になり、やつれ果てていくのは読んでいて辛かったです。

臓器移植の現状、脳死問題、死生観など考えさせられるテーマが多くありました。
はっきりとした正解はなく難しい問題ですが、考える機会を得られたのはよかったです。

■評価(5個が最高:★は1点、☆は0.5点)

  ◆トリック度 267
◆満足度 ★★★

■こんな方におすすめ!

  • 切ない話が好きな方
  • ファンタジーが好きな方
  • 社会派志向の方

◆テーマ読み「水」◆
テーマ読み「水」

もし期間中にテーマに合致する作品に出合えたら追加エントリーするかもしれませんが、
ひとまず本作で私のエントリーは終了します。
まだ締め切りまで1か月ありますので、どしどしご参加くださいね♪

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Tag:初野晴 幸福の王子

COMMENT 2

Mon
2015.08.31
08:14

mokko

URL

しまった・・・

被ってしまいましたぁ~
感想は後程・・・

Edit | Reply | 
Mon
2015.08.31
22:30

翠香

URL

mokkoさんへ

mokkoさんもこの作品を予定しているのですね。
私は6年も積読していて、ようやく日の目を見ました(笑)

Edit | Reply | 

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