【陰陽師】 夢枕獏

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By翠香

◆◇◆不思議な男だな、おまえ◆◇◆

陰陽師シリーズ1
短編集
文藝春秋 1988.8
  文春文庫 1991.2


■あらすじ

平安時代。闇が闇として残り、人も、鬼も、もののけも、同じ都の暗がりの中に、時には同じ屋根の下に、息をひそめて一緒に住んでいた。安倍晴明は従四位下、大内裏の陰陽寮に属する陰陽師。死霊や生霊、鬼などの妖しのものを相手に、親友の源博雅と力を合わせこの世ならぬ不可思議な難事件にいどみ、あざやかに解決する。
(文春文庫より)

■感想
野村萬斎さん主演の映画版は2作とも観ており、前々から陰陽師に興味を持っていたのと、
大学で主に平安文学を専攻していたので、この時代が特に気に入っていることもあって、
いつかは読もうと積読していた1冊。
先日のドラマ化を機にようやく手に取りました(笑)

映像では晴明が呪文を唱えると、まるで魔法使いかのようなド派手な演出がされていますが、
原作では晴明が呪文を唱えるシーンは実にあっさりとしています。
九字すらも出てきません。
ま、映像はあれぐらい派手にやってくれないと面白くないですしね(^^;)

夢枕獏さんの作品を読むのは初めてだったのですが、
文章にリズムがあって、それが何とも心地よい感じがします。
特に晴明と親友の源博雅とのやりとりが軽妙です

晴明は武骨で真面目な博雅をからかって楽しんでいるところがありますが、
博雅のことを「優しい漢(おとこ)だな」と感じ入っている場面が多々あり、
本当に博雅のことが好きなのだと分かります。
晴明の屋敷は人の気配がなく(たまに見かけるのはどうやら式神であるらしい)、
庭は手入れされておらず荒れ放題で、どこか孤独を感じてしまうのですが、
こうやってたまに博雅が訪ねてくるのを楽しみにしているのでしょう。
この2人の穏やかな友情が何ともいいのですよね
ミステリ好きとしては、この2人の関係はまさにホームズとワトソンのそれのように見えますね(^^)

 

◆玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること
 帝が大事にしていた玄象という琵琶が何者かに盗まれた。
 博雅は清涼殿で宿直をしていた晩、玄象の音を聞き、音をする方へ向かうと羅城門の前までたどり着く。
 後日、晴明を伴い羅城門へ行くと、声の主は玄象と引き換えにある条件を提示してきたのだが・・・。

 ここで蝉丸が登場。百人一首の歌人として有名ですが、琵琶の名手でもあったのですね。
 しかし博雅が三年も通いつめた相手が盲目の老法師とはね(^^;)
 この声の主は128年もの間、成仏できずにいたとは、憐れなものですね。


◆梔子の女
 妙安寺の坊主となった寿水は、夜な夜な女のあやかしに悩まされていた。
 その女にはなんと口がなかったのだ!

 これはいわゆる判じ物ですね。
 物にも霊は宿る。
 こんなちょっとした過失でいちいちあやかしが出てきたら怖いけど、
 物を大切にしないといけない、そんな教訓にも思えました。


◆黒川主
 鵜匠の賀茂忠輔はある夜、孫娘・綾子の奇行を目にする。
 堀の水の中に全裸でつかっていた綾子は、大きな鮎を咥え、生きた鮎を頭から食べていたのだ。
 堀の縁には黒い狩衣に黒い袴をはいた男が立っており、綾子を操っていた。

 あんな可愛らしい動物がこんな恐ろしい化生になってしまうとは・・・。
 人間の都合で殺生をすると、思わぬ酬いがあるものなのですね。
 でも化生のものって、生身の人間を意のままに操れるものなのかな?


◆蟇
 応天門に子供のあやかしが出るという。
 応天門は昔から雨漏りがするので、修理をすることになり、調べてみると板の間にお札が挟まっていた。
 しかし板から剥がそうとして誤って札を破いてしまい、雨漏りは無くなったがあやかしが出るようになる。

 晴明たちはついに異界にまで来てしまいます。百鬼夜行を目の当たりにするとは、いやはや(^^;)
 子供の仕業とはいえ、殺生をしたことで災いを被った夫婦が何だか哀れです。
 式神の利用価値には驚かされました。


◆鬼のみちゆき
 軛に牛がかかっていない牛車に乗った鬼が夜な夜な出るという。
 黒い直垂を着た武士と壺装束の女を従え、簾の中には美しい女が乗っていた。
 女は七日かけて内裏まで行くと言い、大路まで出ると牛車もろとも消えてしまうという。

 この当時、こういう悲しい女性はたくさんいたのでしょうね。恋焦がれて鬼になってしまうとは、哀し過ぎる
 この女性は成仏できたのでしょうが、せめて生きている間に想いを遂げさせてあげたかったですね。
 博雅も隅に置けないな~と思ったら、そういうことでしたか(^^;)


◆白比丘尼
 博雅は晴明から人を5、6人斬ったことのある太刀を持ってくるように頼まれる。
 博雅は父が使っていた太刀を持って晴明の屋敷を訪れると、黒い僧衣をまとった女が庭に現われた。
 晴明に会うのは30年ぶりだという。

 猫(式神)を使って、離れた場所にいる博雅と会話してしまうとは、凄い技ですね。
 人魚の肉を食べると歳をとらないという話は聞いたことがありますが、
 三百年も生きながらえるのも辛いものなのですね。
 博雅の「人とは、いつか、死ぬのがよいのだな」という言葉が沁みます。

■評価(5個が最高:★は1点、☆は0.5点)

◆満足度★★★★

■こんな方におすすめ!

  • 平安時代が好きな方
  • 怪奇ものが好きな方
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Comments 2

mokko  

陰陽師

色んな人が書いてるけど、やはり獏ちゃんの陰陽師が
一番色っぽくて好きです。
映画:陰陽師の野村萬斎さんは、はまり役でしたねぇ
やはり雅な世界を映像にするなら、それなりの経験というか
バックボーンがないと難しと思いましたよぉ~
全て読んではいないけど、大好きですヾ( 〃∇〃)ツ ウキャッ

2015/09/19 (Sat) 12:45 | EDIT | REPLY |   

翠香  

mokkoさんへ

他の方が書いている陰陽師を読んだことがないので、比較はできませんが、
夢枕獏さんの文章はリズムがあって心地良い感じがしました(^^)
続編は手元にないので、いつ読めるか分かりませんが、
またいつか読みたいと思います♪

2015/09/19 (Sat) 16:18 | EDIT | REPLY |   

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